高松高等裁判所 昭和40年(う)9号 決定 1965年5月11日
主文
本件控訴を棄却する。
理由
<前略>原判決が、本件交差点の範囲ないし東北の側端をほぼ所論のように解し、被告人の本件駐車を違法と認定したことは判文上明らかである。ところで、道路交通法にいう交差点とは、本件のように歩車道の区別のある道路とその区別のない道路が交わる場合においては、車道と右の区別のない道路の交わる部分であることは同法第二条第五号の規定から明らかである。そして、原判決挙示の原審検証の調書によれば、本件現場の形状は別紙添附図面のとおりであり、原判示のとおり、右図面のイ、ニとロ、ハの各地点をそれぞれ結ぶ線は、国道の歩道と車道との境界と同じように、高低差のある縁石で区画せられており、同図面のイ、ロ、ハ、ニ、イの各地点を結ぶ線内の部分は国道から市道へ、また市道から国道へ進む車両が通行できる状況であることが認められるから、右の部分は、国道の車道に含まれるとともに市道にも含まれる共通の場所であつて、すなわち、国道の車道と市道の交わる部分であるといわなければならない。そして、右の部分が市道に含まれる結果、本件交差点の範囲は、国道の車道と市道の交わる全区域、すなわち、右図面のイ、ロ、ハ、ヘ、ホ、ニ、イの各地点(ホ、ヘはニ、ハから車道南端の線に垂直に引いた各線がそれぞれ車道南端の線に交わる地点)を結ぶ(イ、ロ間は直線で)線内の部分であり、従つて、本件交差点の東北の側端はイ点であると解するのが相当である。
以下は主として道路交通法第四四条第二号の文理に基づく解釈であるが、そもそも、同条号が原則として交差点の側端から五メートル以内の部分における駐車を禁止したのは、交差点における交通の安全と円滑を図るためであることはいうまでもないところ、本件のように交差点のかどが曲線状に縁取られている場合においては、左折車は右曲縁に寄つて進行すべきものである(同法第三四条参照)から、交差点の側端を前示のように右曲縁の初まる地点と解するのが同法の駐車規制の法意にも合致するといわなければならない。
所論は、別紙添附図面のイ、ロ、ハ、ニ、イの各地点を結ぶ線内の部分は、本件現場の実態によれば歩道であり、歩道を交差点の範囲に含ませるのは矛盾である旨主張するけれども、前説のとおり、右の部分は市道、すなわち、歩車道の一部でもあり、人車ともに当然通行し得る特殊な場所であつて、同図面ハ、ニ、ホ、ヘ、ハの各地点を結ぶ線内の部分が当然の歩行を許さない国道中の車道であるのと明らかに異なるのであるから、所論の部分が実態上歩道であるとしても、このような特殊な場所を交差点に含ませることは必ずしも矛盾でもなければ不当でもないといわなければならない。のみならず、所論の部分は歩行者ばかりでなく車両も当然自由に通行していて、交通の輻輳し易い場所であるから、交差点の範囲を前示のように解するのが駐車規制の法意に一層適合するといわなければならない。
原判決挙示の各証拠によれば、被告人は別紙添附図面イ点から北方五メートル以内に普通貨物自動車を駐車させたことが認められ、これを動かすに足る証拠はない。そして、右駐車が道路交通法第四四条第二号の規定に違反することは前段の説示から明らかであるから、原判決には所論のような法令の解釈適用の誤ないし事実の誤認はなく、論旨は理由がない。(横江文幹 東民夫 梨岡輝彦)